2025.12.15
コラム:「デジタル社会形成法制定に伴う不動産取引に係る研究会(仮称)」設置及び運営・調査有識者ヒアリング
日 時:2021年3月30日(火)13:00~14:30
会 場:全宅連会館 会議室
参加者:
【株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)】
代表取締役 本間英明
常務取締役 執行役員 不動産事業本部長 成宮正一郎
【公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会】
木幡剛事務局長、篠﨑一成事務局次長
事業部 武田陽介部長、岩本和之課長補佐
不動産総合研究所 鈴木淳統課長、斎藤佑樹
【ニッセイ基礎研究所】
社会研究部 塩澤誠一郎都市政策調査室長、篠原二三夫土地・住宅政策室長、
竹田浩一客員研究員
(敬称略、以下同様)
1.エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)について
株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンは、新潟市を拠点とした土地家屋調査士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、一級建築士からなる総合事務所中央グループ(1982年創業)が母体となった士業専門家に対する業務支援会社である。事業としては、士業専門家が各事業者(金融機関・不動産事業者・建築事業者・契約当事者)から受託する固有業務(登記委任等)以外の周辺業務を担当し(BPO事業)、また、取引を一括管理するクラウドサービス(エスクローサービス事業)を提供している。
設立当時は、中央グループに属する士業専門家と連携して事業展開していたが、その後、全国の士業専門家からの要請を受けて、自社のBPO事業及びエスクローサービス事業を他の士業専門家にも開放して事業化を進めている。業態としては、士業専門家と共に不動産取引の「利便性・効率性・安全性の向上」を目的としたトランザクション・マネジメント・カンパニーを目指している。
本事業の設立経緯だが、2002年に中央グループ東京事務所を開設した際、属人性が強く労働集約型であった士業専門家の事業領域をどう拡大させるかを模索したことから始まった。その問題意識により飛び込んだのが小売業の経営事例研究会だった。その時の第一声が、「士業専門家もサービス業の一つ、サービス業の原点は米国、まず米国に行って先進事例を見て来なさい」だった。そのアドバイスを受け、米国に渡ったのが起業のきっかけとなった。
まず、ラスベガスで開催されたランド・タイトル・アソシエーションの全米大会に参加して、米国の決済サービスであったエスクローとタイトルサービスについて調査をした。日本では、不動産取引における契約以降の手続きは関係者がバラバラであり、様々な士業専門家が連携して行っている。しかし、米国では、電子契約で売買契約を終えたのちは、エスクロー会社(信託)が窓口となりワンストップで決済業務を担い、タイトル(権原保険)会社が登記を担当し、それらの不動産履歴情報を蓄積(タイトルプラント)し、取引に係る保証保険を発行していた。
米国におけるエスクローとタイトル会社の多くは権原保険会社を母体とし、役員には弁護士が多い。過去、幾度も日本進出を検討してきたが、日本での事業化は難しいとの結論に至ったという。その理由として、日本では、豊臣秀吉が行った検地と台帳整備により不動産に権利関係を紐づける「物的編成主義」をとって来たことがあげられる。日本における不動産の権利は、法務局で登記簿や公図により所有権等の権利や範囲を精緻に整備されて来た。また、登記に公信力はないものの士業専門家(司法書士・土地家屋調査士)が代理人となり権利変動ごとに権利確定業務を代行し、さらに登記を所管する法務局の登記官は申請された書類を厳重に審査してきた。そのため、日本では法務局の登記情報に疑いを持っている人はいなかった。よって、権利の安全性に不安のない日本の市場で米国のタイトル(権原保証)ビジネスは育たない、これが日本進出を断念する理由だったという。
しかし、調査をするにつれて米国のエスクローとタイトル会社の中にも、唯一、アジア(韓国とオーストラリア)に進出している拠点があった。そこで、韓国とオーストラリアに向かいその実態について調査した。韓国では、当時、破綻した金融機関の業務支援として、エスクロー会社が金融機関のローン事務の代行を行い、徹底的な事務合理化を図っていた。また、オーストラリアでは、タイトル会社が、取引ごとに生じうる境界紛争用の保険を販売していた。従来まで、取引の決済前までに必須であった手間のかかる測量業務を省略するサービスは消費者の支持を受けていた。この二つの拠点における調査は、起業する上で大きなヒントとなった。
日本では、米国のようなエスクローやタイトルという業態がなかったため、韓国の事例に倣って金融機関の事務合理化モデルを手本に、士業専門家の専門能力を活かした金融機関のバックオフィス業務を事業化として始めた。士業専門家の専門領域を広げた新しい専門サービスは金融機関でもニーズは高く、事務合理化に資する事業として順調にスタートした。また、起業した当時は、ネット専業銀行が誕生し、フラット35が普及し始めた時期と重なった。従来、金融機関の事務を外部に委託すると言う文化など考えられない時代だったが、ローコストオペレーションを標榜した多くの新興の専業ネット銀行は、積極的に固有業務以外の周辺業務のアウトソーシングを試みた。
そのおかげもあり弊社は、大量の事務を受託出来ることとなり、自社で共同事務センターを開設、大幅なコスト削減を実現して、ネット専業銀行及びフラット35の成長と共に事業は成長した。起業後、自社の信用補完の意味で株式上場を目指したが、短期間で株式上場できたのも、この10年間におけるネット専業銀行とフラット35の普及の勢いが後押しになっている。
近年、取引に関わる事業分野を金融機関から不動産事業者へと拡大し、重要事項説明書の調査、契約事務等の代行、登記の完了までの契約管理を一括で行い、さらに取引に関する事務の取引保証を開始した。米国のエスクローサービスに倣った日本版のエスクローサービスは「非対面決済サービス H’OURS(アワーズ)」と名付けた。アワーズは、信託の機能を使って、不動産取引のキャッシュレス化を実現し、売買契約における履行確認を事前に行い、取引決済事務を保証するサービスである。過去、三井住友銀行、日本司法書士会連合会と共同研究を行ってきたが、やっとサービス開始にこぎつけた。
日本の不動産取引における決済では、セレモニーとして対面で会う事が多く、非対面決済は馴染みがなかった。しかし、風向きが変わったのは働き方改革とコロナ禍による影響だった。通常の不動産取引の決済は、売主、買主共に銀行に出向き、不動産事業者が立会い、金融機関による着金確認、司法書士による抹消書類の確認、本人確認、意思確認、登記書類の確認を経て、取引が終了する。この間の所要時間は、軽く1時間以上はかかり、この時間の無駄、不便さは誰もが感じていた。
アワーズは、この無駄な時間を無くし、決済を非対面化したが、併せて、手付金を決済当日に持参しなくても良いキャッシュレス化をも可能とした。従来は、事前に不動産事業者が手付金を預かるか、または、当日に現金を持参しなければならなかったが、安全性や法律上ではグレーな部分もあり、これらの資金管理を信託にて行うこととした。
「非対面決済サービスH’OURS(アワーズ)」は、不動産テックというよりは、士業専門家とテクノロジーを併せた不動産取引決済のDXサービスである。米国の不動産テック企業も、前工程であるB to Cのポータルサービスから始まり、中工程であるB to Bの業務支援が先陣を切ってきたが、近年、後工程のエスクロー、決済業務を合理化するテックベンチャーが多く出てきている。私たちも米国の不動産テックベンチャーと密に連携を取りながら、グローバルな視野で国際標準を意識して開発を進めている。
私たちが目指しているトランザクション・マネジメント・カンパニーという契約管理の業態は、小売業でいうコンビニエンスストアと類似している。創業当時のコンビニエンスストアは、誰もが理解できなかった。業種で定義したら酒屋であり、パン屋であり、文房具屋であり、本屋であり、最近では、金融機関や行政の出先の役割までを担う。現在では、自宅から10分程度の地域にあり、深夜まで何でも揃う小売業として無くてはならない存在となった。そこで、弊社の商号も、日本の不動産取引に関わる中立的な第三者(エスクロー・エージェント・ジャパン)という意味で、業種から業態への革真の思いを込めて名付けた。今後とも士業専門家と共に無くてはならない新しい不動産取引決済のカタチを創り上げていきたい。
2.キャッシュレス・非対面決済サービス H‘OURS(アワーズ)について
①サービスの概要
【社会的背景】
時代背景としては、まず、働き方改革による分業化、事務合理化の流れがきっかけとなった。さらに、コロナ禍による非対面のニーズが高まったことも拍車がかかった。また、ここに来て不動産取引に限らずキャッシュレス化が進んでいることも大きな影響を及ぼしている。
【アワーズとは】
従来、仲介事業者の担当者は、物件選定の相談から最後の引渡し事務まですべてを担当して来た。アワーズは、契約から決済までの資金と権利の移転に関する業務をすべて一括管理し、取引事務を保証する。まさに米国のエスクロー・タイトルサービスの日本版である。
【資金の流れ】
買主に対して、手付金や仲介手数料を信託口座への送金を契約の2、3営業日前までに連絡が入る。資金の送金を確認したのち司法書士と弊社が連携して、買主に送金するための条件成就内容を確認する。もちろん確認ができるまで資金は流れない。また、決済時には、士業専門家への報酬、仲介手数料、立替金等の諸費用も個別に送金業務として信託会社から支払う。
【信託の安全性】
ポイントとしては三つ。一つ目は、信託で預かっている資金は倒産隔離されている。信託会社が倒産しても信託口座に保全されている金銭は、全額保全される。二つ目は、決済資金は信託口座として市中の銀行に口座を作るが、その銀行が破綻した場合でも、全額保全される。三つ目は、預かっている資金は当事者であっても勝手に手が付けられず、売主・買主双方の承諾後、送金の指示があるまでは分別管理される。以上が信託の安全性となる。
【アワーズの特徴】
ポイントとしては二つ。一つ目は、契約時の手付金や仲介事業者の仲介手数料等の支払いをキャッシュレス化し、現金でのやり取り、契約場所でのやり取りを無くすことである。
二つ目は、決済時の非対面化。アワーズは、「手続きのために会わない」と力説するが、従来の慣習としては、決済時には会わなければならないと考える事業者の方は少なくない。最後の決済の時に会わないと新しいお客様の紹介や仲介手数料をもらう際に顧客満足度が下がるのではないか、また、手続きは内製化しておかなければ担当者の資質が下がるのではないか、との懸念をいただく。
しかし、本当にそうだろうか?もし、会いたいのであれば手続きの為に銀行に集まるのではなく、ゆっくり事業者の応接間やホテルで会ったら良いと申し上げる。また、米国では生産性向上のために徹底的に分業化を進め、反対に出来るだけお客様と会う時間を確保するという。時間のかかる面倒な手続きを会わずに、取引事務に忙殺されずに、完全な取引を保証する「アワーズ」の良さを過不足なく消費者に伝えていきたい。
【顧客の課題】
エンドユーザーはどう考えているのか、昨年インターネットを使って1,000人に意識調査を行った。契約時に大金、高額な資金を持って行くことに対して、また、決済時に1、2時間拘束されることに対して、どう感じていたのかを聞いて見た。
結果、契約の時に高額な現金を持ち歩くことは不安であるとの回答が87%に達した。この中には、仕方がないという回答も含むが、消費者の回答を見ていくと、不安だが仕方なく持って行くという回答が多かった。今までは選択肢がなかっただけで、キャッシュレス化のニーズは強いと感じた。
決済時も同様で、今までは対面が必要だから諦めていたが、立ち会わずに済むのならそれを使いたいという回答が90%に達した。
仲介事業者の中では、お客様に営業担当者の評価、店舗の評価をして頂き、それをホームページに公開している企業がある。その評価の中では、キャッシュレスで良かったという声を多くいただいている。また、キャッシュレスサービスを導入していたにも係わらず、担当者が事前にアワーズの案内をしていなかったことへのお叱りのメッセージもあるという。顧客に案内をすれば9割の皆様の満足をいただけており、また、一度、アワーズを利用した仲介事業者の担当者のリピート率は7割を超えている。
【仲介業者の課題】
ポイントとしては三つ。仲介業者の課題として、業務の効率化とリスク回避がある。一つ目として、取引決済は、金融機関が稼働している時間内で調整する必要性があるため、売主・買主の日程調整が手間となり、決済が集中する時期は通常の業務に多くの負荷がかかる。特に仕事、遠方、高齢、病気といった要因が絡むと、更に日程調整が困難になってくる。
二つ目として、月末になると決済の手続きで軽く2~3時間は拘束され、他の業務をすることができない。この二つが非効率化の要因であった。
三つ目として、リスク回避。契約前の前日に手付金や仲介手数料を預かることは、標準媒介約款や銀行法の預り金規制においてコンプライアンス上懸念が残る。また、仮に事前に預かった場合でも、その現金を管理しなければならない煩雑さがある。契約の約7割が土日に行われており、買主としては、金曜日までに銀行の窓口で数百万円単位の現金をおろし、それを自宅で保管し、契約場所まで持って行き、売主に渡さなければならない。また、売主としては、その現金を持って帰り、最寄りの銀行にて自己の口座に振り込まなくてはならない。売主・買主にとっても、この間の盗難リスクや心理的な不安は拭えなかった。これらの課題を解決したいと考えたのがアワーズである。
【アワーズによる利便性】
消費者にとっては、資金を持ち運びしなくてもいい、集まらなくていい、会社を休む必要がない、また、遠方の場合に出向く必要がないといった安全性と時間のメリットが大きい。
仲介事業者の担当者にとっては、日程調整が不要となり、集まらなくてよいため業務効率化があがる。具体例でいうと、アワーズを使う前は、繁忙日の月末には頑張っても3件位までしか決済は組めなかったが、アワーズを使った後は、月末最終日に何件決済を入れても安心でき、決済の案件数が飛躍的に伸びたと評価を頂いている。
また、意外と評価が高かったのが、決済当日の予期せぬトラブルが解消され、心理的に楽になったという声だった。これまでは、決済日に持参した印鑑が実印ではなく銀行の届印であったり、登記識別情報を忘れて決済が予定通り進まなかったり、様々なアクシデントが絶えることはなかった。次の決済が立てこむ場合などは、時間的な余裕もなく、結果、決済が流れる原因ともなった。しかし、アワーズでは、事前に全ての取引事務を完了させるので、その心配が一切いらない。決済における「取引の確実性」は高い満足を頂いている。
【差別化】
ポイントとしては四つ。一つ目は、アワーズ上での業務を一括管理できるクラウドシステムを自社開発しており、都度、改良を進めて常に進化させていること。二つ目は、全国の士業専門家と連携してアワーズを提供するための体制が整いつつあること。三つ目は、100%子会社である管理型信託会社を自社で持っているため商品開発・設計の自由度が高いこと。四つ目は、金融機関に関わる取引事務を行うため強固なセキュリティを備えた事務センターの運用実績を持っていること、以上がアワーズの参入障壁となっている。
これらの機能があることにより、決済日の前日までにすべての確認作業と手続きを完了させることが可能となる。従来のように決済日に取引の当事者が集まり、そこで、本人確認から始まり、登記識別情報、意思確認、振込明細等の手続きをせずに、前日までにすべて終わらせることができるため、決済日は手続きのために会う必要はなく、非対面でも確実な決済が保証される。
②今後の展望
法改正による電子契約を見据えて取引に関わるDX化を進めて、「不動産取引決済の24時間365日化」を実現出来る環境・仕組みの構築を急ぎたい。現状の決済では、登記書類や資金のやり取りは同時履行を前提としている。しかし、近い将来、時間や場所の制限がなく合法的に、24時間365日、同時履行を前提とせずに、「代金等の支払い」、「権利の移転・設定」、「鍵の引渡し」の履行が保証されるサービスを商品化していきたい。まず、優先順位としては、決済可能な曜日に土日・休日が含まれるだけで、柔軟性のあるスケジュールが組めると考えている。
【決済の3大要素】
決済の要素を「金銭」、「登記」、「鍵」に分けて課題を考えて見たい。まず、「金銭」については、全銀システムの稼働時間が拡大しているため、曜日・時間に関わらず他行への送金、入金確認が出来るようになっている。アワーズにおいても、契約のおおむね7割が土日あるいは平日の夜間に行われ、契約完了とともに手付金と仲介手数料をリアルタイムで送金しており、7割程度がこのモアタイムシステムを使っている。
問題は「登記」である。現状の不動産登記の受付時間は平日の8時30分から17時15分で、オンライン申請は21時まで可能だが、法務局の受付は17時15分までとなっている。では、17時15分以降にオンライン申請したらどうなるかというと、翌日の8時30分以降までは、受付番号は付与されないため、この間にどのような登記申請がなされているかを確かめる術はない。つまり、この間は、確実に優先順位を確保できているとは言えず、第三者対抗要件を備えた状態とは言えない。
「鍵」については、スマートロックが珍しいものではなくなってきており、時代と共に広がりをみせている。今後、金銭の支払いと登記申請の履行後に発生する鍵の引き渡し作業もスマートロック等で効率化が進むと期待している。
【制度上の課題】
制度上での課題を三つあげたい。一つ目は、登記申請のタイムラグである。先ほど述べたように8時30分から17時15分までが法務局の実質的な稼働時間である。21時までオンラインによる登記申請は可能だが、17時15分から21時までの登記申請では、受付番号が付与されていない状態となり、翌営業日の8時30分から送信された順番に受付番号が付される。つまり、この間に何かしら悪意を持った登記が申請されていた場合には登記の優先順位について確認することは出来ない。
二つ目は、決済の日程的な制約である。現在、住宅ローンの決済は同日実行が前提であり、今日が決済日であれば今日実行することになる。将来、土日・休日の決済を可能とするためには、金融機関が土日・休日に住宅ローンの実行を行い、また、法務局の登記申請が可能とならなければ実現できない。もちろん、抹消する金融機関の土日・休日対応も必要となってくる。
三つ目は、リスクマネジメントである。日本の登記制度には公信力がない。売主の高齢化が進むと、二重譲渡のリスク、虚偽登記のリスクは増えてくる。電子化が進む先進国でも詐欺はなくならず、世界的にも深刻な問題となっている。さらに、法務局のオンライン申請では、従来、登記申請の際に補正にて事務処理が出来ていたものが、現在では、即時、取下げになる事案が増加している。つまり、登記完了まで受付順位の確保が安心できない状態が続いている。
【課題に対する取組み】
一つ目は、法務局にて、どの物件にどのような申請がなされているか、365日24時間、確認できる環境は整備して欲しい。また、現在、登記申請の受付順位の確保については司法書士の人的な努力目標に頼るしかない。アワーズのシステムでは、契約から登記申請まで一気通貫による自動化を意識したRPA化(ロボット化)を視野に入れている。具体的には、契約情報から登記情報まで、一連の登記事項のデータの重複入力を無くし、申請書も自動生成されたものを司法書士が確認して、売主・買主の決済確認が取れ次第、自動的に法務局にオンライン申請できる仕組みである。また、決済後の記録はブロックチェーン等を含めた改竄できないデジタル上の記録として残していきたい。少しでも司法書士の負担を軽減したいと考えている。
二つ目は、金融機関が、決済の前に事前にアワーズの信託口座へ振り込みが出来ないかという点である。これには弊社の信用度が問われ、事務ミスの無いオペレーション体制や取引自体を保証するリスクマネジメント体制が求められる。また、抹消については、事前に抹消書類を出してもらうために超短期のつなぎ融資、立替完済ローンを商品化しなければならない。しかし、事前に完済して抹消書類を確保するための諸経費・金利コストを誰が負担するかは課題として残る。
最後に究極のリスクマネジメントになるが、米国のTitle Insurance Company(権原保険会社)に倣って、取引自体を保証する権原保険の商品化をしたい。アンダーライティング(再保険)を引き受ける保険会社は既におり、弊社にて契約管理をし、取引履歴情報を蓄積することによって、保険を発行する商品化の目途はたっている。しかし、その保険商品を購入する市場ニーズが日本で育つかはまだ見えていない。不動産履歴情報(米国ではタイトルプラント)からリスク量を自動的にスコア化し、取引にリスクがあるかどうかを事前に算定できれば、取引の安全性は格段にあがり、効率化も進むと考えている。
以上の課題は、一足飛びでは実現が難しい。まず、優先順位としては、不動産取引決済に関わるDX化に取組んでいきたい。次世代のアワーズでは、米国の様にスマートフォンで手軽に契約から登記完了まで紙に依存せずに手続きを終え、完了した取引は保証され、その取引履歴情報から、いつでも自己の情報にアクセス出来るストレージ(電子倉庫)機能を標準装備させたいと思っている。
質疑応答
(質疑)アワーズの収益はどこから得られるのか。
(応答)利用料としては1件当たり4万円。利用料の支払いは、売主・買主が負担する場合、または、仲介事業者が仲介手数料から負担する場合がある。詳細の負担割合はお任せしている。
(質疑)仲介事業者が負担しているケースが多いのか。
(応答)6:4で仲介事業者が負担しているケースが多い。
(質疑)負担が現在より増加するようだと消費者に受け入れられないのではないか。
(応答)手続きに係る全体の諸経費の負担総額は、従来と変わらないように企業努力をしている。
(質疑)宅建協会の会員会社がこのシステムを使った例はあるか。
(応答)過去に何件かお問い合わせいただいたが、その時点では、実証実験として先行していたため、限定的だったと記憶している。現在、システムを改良し、新たな事務センター構築に取り組んでいるため、大量案件が受託できる体制が整い次第、広く告知をしていきたい。その際にはぜひ協力を願いたい。
(質疑)モアタイムシステムで日曜日でも売主への送金が可能だということか。
(応答)モアタイムに参加している金融機関であれば可能である。
(質疑)金融機関はどこでも構わないのか。
(応答)基本的には構わない。モアタイムシステムに接続していない金融機関もあるが、徐々に金融機関への接続は広がっている。また、以前は、住宅ローンの実行について、信託口座の利用に理解を示さない金融機関もあったが、利便性を鑑みて理解を示す金融機関は着実に増えている。
(質疑)決済は、土曜日はできないということか。
(応答)土・日曜・休日は現金のみの対応となる。事例として、引渡しを土日に行い、資金も渡してしまい、手続きだけを月曜日に行うという取引はあったが、登記上の対抗要件は備えていない。よって、現状では、金融機関が絡む決済は平日になっている。
(質疑)提携ローンを持っている場合には、休日の前日に実行するなど、提携ローンは利便性をはかってくれないのか。
(応答)事前実行をしてくれる提携ローンは承知していない。仮に休日の前日に信託口座へ実行されたとしても、売主側の金融機関が残債の完済を確認できなければ、抹消書類の引き渡しは行われない。よって、事前に残債を立替えなければ、資金の実行と司法書士による登記書類の同時履行は従前と変わらない。
(質疑)アワーズの売り込み先は仲介業者なのか、エンドユーザーなのか。
(応答)具体的には、最寄りの司法書士事務所から仲介業者に対して提供されることを想定している。弊社は、士業専門家(主に司法書士)の支援会社なので、士業専門家のバックオフィス機能(業務委託)として連携を担う。
(質疑)エンドユーザーである買主、あるいは売主から、アワーズを使いたいという問い合わせなどはないか。
(応答)現在のところはない。アワーズは、不動産の個人間売買のための決済サービスではなく、仲介事業者の事務合理化、取引当事者の利便性、士業専門家の差別化したサービスが前提である。今後、利用した消費者の方からのリピートは増えると思っている。
(質疑)一度、平日の面倒な取引を経験した人がアワーズを知ったら、そのメリットを理解するのではないか。
(応答)リリースしたばかりで、取引当事者の方から再度の利用事例はないが、仲介事業者の担当者からのリピート率は非常に高くなっている。
(質疑)もちろん仲介事業者がいて、エンドユーザーから仲介事業者に対してアワーズを使えないかと問い合わせることはあると思う。そうなれば全宅連の会員もアワーズを導入しようという流れになるのではないか。
(応答)アワーズのサービス提供は、士業専門家である司法書士が、私たちの機能を使って差別化したサービスとして提供することを想定して開発した。よって、全宅連の会員様の取引先である司法書士事務所から広がる流れを作っていきたい。
(質疑)他社は、アワーズをどのようにPRしているのか。
(応答)「キャッシュレス」を前面に出している会社もあれば、「非対面」を前面に出している会社もある。一般の方にはエスクローというよりも、キャッシュレスや非対面の方が分かりやすいようである。会社によっては、アワーズ利用を任意ではなく義務として取り組んでいる。
(質疑)どのような会社がアワーズを使っているのか。
(応答)弊社のIR上で公表している会社を参照頂きたい。現在、それ以外にも多くの会社からトライアルの相談を頂いている。
(質疑)導入する場合、どのような手続きが必要なのか。
(応答)導入する事業者と弊社との間で業務委託契約を締結、個別案件ごとにお客様から利用申込書を出してもらう。これを専用システムにアップロードしてもらえばすぐにでも利用ができる。導入の際のイニシャルコストはなく、利用頻度による細かい規定はあるものの、基本的に1件4万円で利用はできる。
(質疑)事前の書類の確認は司法書士が行うのか。
(応答)アワーズは、確実な決済を行うために、事前に書類確認は、その登記を代理する司法書士が責任をもって行う。欧米を見ても電子契約等のオンライン申請が進むほど詐欺も横行しており、エスクローやノータリーなどが必ず取引当事者との対面を義務化して、意思確認を行っている。日本におけるその重要な役割は、司法書士が要になると考えている。
(質疑)キャッシュレスと非対面が切り口なのか。
(応答)ご利用いただいた声としては、そのような声が多い。
(質疑)ヤフーやメルカリの機能はエスクローである。○○ペイが融資をやり始めたら銀行は要らなくなるのではないか。
(応答)エスクローは、決済における中立的な第三者と訳される。電子取引の社会が進めばエスクロー機能は重要になる。また、キャッシュレス社会も避けては通れない。さらに、ブロックチェーン等の改竄防止の仕組みが普及すればトラストレス(信託も要らない)社会も到来する。あらゆる産業界でDX化は多くの仕組みを変えて行くと想定されるが、エスクローを含めて要らなくなると言うよりは変化出来なければ消えて行くだけなのだと思う。まず、現段階においては、やらなければならない課題は山積みの状態であり、消費者の不便はまだまだ解決されていない。未来を演繹しながらも足元を見つめ、一つずつ現在の課題を取崩していきたい。
(質疑)現状として電子契約等は行っていないのか。
(応答)弊社としては、競合が多いこともあり電子契約についてのシステム開発は予定していない。米国での電子契約の経緯を見るとMLSに併用しているポータルから契約のドキュメンテーションや電子サインが多く使われて一般的になってきた。つまり、日本でももっとも不動産事業者の皆さんが利用されているポータルから普及が進むと見ている。今後、様々な電子契約のアプリが出てくると思われるが、アワーズはどんなシステムともAPI連携したいと考えている。
(質疑)EAJのサービスの中でそういったものを取り込んでいこうとはしないか。
(応答)弊社は、取引決済に特化した米国のエスクローとタイトルカンパニーの業態を目指している。よって、得意な機能に特化して磨きをかけ、他はAPI連携を基本としていきたい。
(質疑)電子契約も含めた総合的なプラットフォームを提供するということではなく、エスクローの機能として汎用性を持たせ、契約アプリと連携できるようにするという理解でいいか。
(応答)そのように考えている。
(質疑)重説や契約の電子化は既定の事実ということか。
(応答)これは時代の流れとして逆らえないと思う。米国でも個人のエージェントの皆様が電子契約を使っており、一度使ったら止められないと聞く。世界的に同じ流れになるのではないかと思う。
(質疑)賃貸の初期費用や家賃の収受をカードで出来るようになれば、それは差別化にならないか?
御社で取り組む気持はあるのか?
(応答)消費者にとっては大きな差別化になると思う。カードは、債務者の返済資力等の与信力が重要になるため、保証母体をどう構築するかが課題になる。現段階では、賃貸の分野における決済は考えていなかったが、共同研究、実証実験の機会があれば協力は惜しまない。
(質疑)信託口座は取引ごとに作るのか。
(応答)基本的に一つの信託口座で分別管理をしている。事業者専用の口座を作ることも可能だが、余計な費用がかかってしまう。まずは、アワーズ用の信託口座を作っているので、それを使い、そのうえで事業者専用の口座を作るかの検討を選択肢として提案している。
(質疑)送金の際に両方の指示を確認するというが、それはどのようにするのか。
(応答)送金にあたっては、仲介事業者に対し、指図書(PDF)を専用システムにアップロードし、その内容を売主・買主の両方に確認してもらう。最終的には、契約終了の確認ができれば送金するところまではシステム化で対応している。
(質疑)売買の電子契約は進まないと考える人もいるが、どのようにお考えか。
(応答)賃貸同様に売買の分野でも進むと考えている。まず、コロナ禍においては非対面で出来ることは非対面と言う流れは止まらない。世界的な潮流であり日本だけが例外になるとは考えにくい。
(以上)